2022年11月10-11日に、岡山コンベンションセンターにて第157回日本歯科保存学会秋季学術大会が行われ、シンポジウムにて講演いたしました。
講演ではシンポジウム2「究極の歯髄保存」の中で「実臨床での歯髄保存 -成功の鍵と臨床課題:診断、術式、予後-」というタイトルで、診療における歯髄保存の意思決定と実際の症例を発表しました。
歯痛を伴う歯の治療では、通常は歯の神経(歯髄)を全て取り除く抜髄が広く行われています。もし歯髄の炎症が一部に限局している場合は、その部分のみ取り除いて残りの健康な歯髄はできるだけ残すという治療方法(断髄)があるものの、あまり一般的ではありません。しかし、歯の歯髄がなくなると新たなう蝕(二次う蝕)ができても気づかなかったり、歯の破折リスクが高まったりします。特に、超高齢社会の日本においては、健康寿命の延伸とともに歯の喪失リスクを下げる治療の普及は急務と言えるでしょう。現代の歯内治療ではマイクロスコープなど拡大視野での治療や、生体親和性の高い歯科材料の登場から、断髄が予知性を高く行えるようになってきました。
今後は、断髄をはじめとした歯髄保存療法が治療のオプションになることを切に願っております。